Web広告運用はAIに奪われる?2027年に残る仕事と広告運用者の将来性を予想

Web広告運用はAIに奪われる?

業界歴15年の広告運用者が語る、AI時代の「なくなる作業」と「人にしか残らない仕事」

「広告運用の仕事は、AIに奪われてなくなるんじゃないか」
「この仕事に将来性はあるのか」
生成AIや各広告媒体の自動化が一気に進むなか、そんな不安を抱える運用者・担当者は少なくありません。
一般論なら検索すればいくらでも出てきます。
でも本当に知りたいのは、現場で実際に手を動かしている人が「何が消えて、何が残ると見ているか」ではないでしょうか。
今回は、地方・中小企業のWeb広告運用を支援するKikkA株式会社の近藤氏に、2027年に向けた『なくなる作業』と『人にしか残らない仕事』を、現場の実例を交えて率直に語ってもらいました。

近藤将也 氏(KikkA株式会社 代表)
地方・中小企業を中心に、Web広告運用の支援と内製化サポートを手がける。中小企業同友会に所属し、数多くの経営者と直接対話を重ねながら、「画面の数字を鵜呑みにせず、事実ベースで成果を判断する」運用スタイルを貫く。

「広告運用の仕事はAIに奪われる?」現場の結論は『共存』

AI時代の広告運用の将来性について語る近藤氏

聞き手:いきなり核心ですが、「広告運用者はAIに仕事を奪われるのか」と聞かれたら、近藤さんはどう答えますか?

近藤氏:率直に言うと、奪われる仕事もあるし、そうでないものもある、というのが答えです。ゼロか100かで語られがちですが、現実はもっとシンプルで。AIにも得意・不得意があるので、不得意なところは人間がやって、得意なところは任せる。その役割分担(つまり『共存』)をどう設計するかが全てだと思っています。

聞き手:「なくなる」ではなく「共存」だと?

近藤氏:はい。仕事そのものが消えるというより、運用者の役割が変わっていく、という感覚が一番近いです。

自動化で『作業が半分以下』に──まず消えていく仕事

聞き手:役割が変わる、というのを具体的に。広告運用を始めた頃と今で、一番変わったのはどこですか?

近藤氏:作業が、ごっそり減りました。体感で半分以上です。レポートは手動で作っていたのが自動化されましたし、ABテスト(複数の広告パターンを出し分けて効果を比べる検証)も、目標と予算さえ設定すれば媒体が自動でやってくれる。進捗管理もそうです。

聞き手:では2027年ごろには、どんな作業の価値が下がっていると見ていますか?

近藤氏:入稿、レポート作り、いわゆるオペレーション領域ですね。手を細かく動かして成果を上げる時代から、AIにいかに最適化をかけてもらうか、という時代に完全に移っています。だから「管理画面をひたすら細かく触れること」自体の価値は、正直、下がっていきます。

聞き手:作業が半分減ったぶん、楽になったということですか?

近藤氏:いや、逆なんです。減ったぶん、『考える領域』が増えました。媒体やSNSが増えて広告の出稿先も増えたので、前段階の設計(どこに送客して、どうCV(コンバージョン=申込や問い合わせなどの成果)につなげるか)を考えないと、そもそも数字が動かない。代理店に求められる領域は、むしろ広がっています。

人に残る仕事①:事業理解と「設計」

聞き手:作業が自動化されても、人に残るのはどこですか?

近藤氏:昔も今も変わらず重要なのは、事業理解。広告でいう「設計」の部分です。今後はここも任せられるようになるとは思いますが、少なくとも2027年は、まだ人の領域だと考えています。

聞き手:AIには事業理解が難しい、と。

近藤氏:AIは与えられたデータを処理するのは、ものすごく得意です。でも「なんでこの会社のこの分野が強いのか」、その背景や根底までは読み解けない。しかも会社って生物(なまもの)なんですよ。今月と来月で方針が変わることが普通にある。AIはそれが苦手で、方針を変えるたびに学習がゼロベースにリセットされてしまう。そういう状況で事業を理解して、判断して、プロモーションに落とすのは、まだAIには難しい領域です。

聞き手:人の感情の部分もですか?

近藤氏:そうですね。数字の裏にある温度感みたいなものは、まだ拾えていないと思います。

事業理解と「設計」

人に残る仕事②:数字の裏を読む「事実ベース」の判断

聞き手:「数字上は良く見えるのに、事業としては良くない運用」もある、と伺いました。

近藤氏:あります。これは本当に大事な話で。例えば、ある葬儀屋さんの案件で、広告の管理画面上は入電としてのコンバージョンが10件ついていたんです。でも実際に会社へ確認しに行ったら、本当の入電は1件だった。

聞き手:10件と1件。それは大きいですね。

近藤氏:タグ計測は100%正確じゃないので、こういうズレはザラに起きます。だから僕は、広告の成果だけで「良かった・悪かった」を判断しないようにしている。画面の数字を鵜呑みにせず、実際に会社へ足を運んで事実を確認する。そういう事実ベースで予算を預かって管理するのが、代理店の責任だと思っているので。

聞き手:数字をそのまま信じるのではなく、現場の事実と照らし合わせるということですね。

近藤氏:そうです。これは広告の数字だけでなく、お客さんから話を聞くときも同じです。たとえば「反応が悪い」「問い合わせの質が良くない」と言われたときに、それが実際に起きている事実なのか、それとも担当者の感覚や解釈なのかを分けて確認する必要があります。
「何件問い合わせがあったのか」「そのうち何件が商談につながったのか」「どんな理由で成約しなかったのか」、こうした事実を一つずつ確認しないと、本当に改善すべきポイントは見えてきません。AIは数字を整理したり、一般的な改善案を出したりするのは得意です。でも、数字の裏側にある現場の状況や、お客様の言葉の中にある事実と解釈の違いを見極めることは、まだ人間の役割が大きいと感じています。
僕は中小企業同友会でいろんな経営者の話をずっと聞いてきた蓄積があるから、この業界はこう動く、という構造が見える。ここはAIが拾いにくい領域だと思います。

数字の裏を読む「事実ベース」の判断

人に残る仕事③:AIが成果を出す「アカウント設計」(hagakure構造)

聞き手:中小企業がAI広告運用でつまずくとしたら、どこですか?

近藤氏:一番多いのは、ターゲティングやアカウント構造を細かくしすぎてしまうことですね。

聞き手:細かくした方が、成果が出そうな気もしますが。

近藤氏:昔はそれが正解でした。入札やキーワード単位の調整がしやすいように、「1広告グループ1キーワード」みたいに構造を細かく分けるのが主流だったんです。でも今は逆で、Googleが「hagakure」というアカウント構造を推奨しています。ひとことで言えば「アカウント構造を、可能な限りシンプルに設計する」という考え方です。

※hagakure(葉隠)は、Googleが推奨する検索広告のアカウント構造です。名称は江戸期の書物『葉隠』に由来します。(参考:Think with Google|The Hagakure method

聞き手:なぜ、あえてシンプルにするんでしょう?

近藤氏:細かく分けるとデータが分散して、AIの学習が遅くなるんです。シンプルにまとめてデータを一箇所に蓄積させた方が、媒体のAIが反応の良いユーザーを早く見つけて最適化してくれる。これは、いまの自動化前提の運用ではいわば『定石』ですね。

聞き手:予算の組み方にも、同じ発想が効きそうですね。

近藤氏:そうなんです。例えば愛知・三重・滋賀に月50万円で配信するとき、つい「愛知30万、三重10万、滋賀10万」と県ごとに割りたくなる。でも3県まとめて50万円で出した方が、AIが反応の良い地域やユーザーを自分で見つけて最適化してくれる。だからこれからの運用者に求められるのは、細かく手作業で刻む力よりも、AIが成果を出しやすいアカウント設計・予算設計をする力。この事例が示しているのは、運用者が不要になるということではなく、役割が変わっている、ということなんです。

hagakure構造の図解

ここまで読んで、
「たしかにAIに任せる部分と、人が判断すべき部分を分ける必要がありそうだ」
「でも、自社がどこまでできているのかは分からない」
と感じた方もいるかもしれません。

そこで当社では、AI時代のWeb広告運用に向けて、自社にどれくらい『マーケティングを自走できる土台』があるかを確認できるチェックリストをご用意しました。
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成果が出ない会社の共通点と「丸投げ」の落とし穴

聞き手:自動化が進んでも成果が出ない会社には、共通点がありますか?

近藤氏:運用を惰性でやっていて、施策に裏付けがない会社は厳しいです。あと、BtoB企業だと、リード(見込み客)を獲得したあとの営業体制とセットになっていないと、成果につながりにくい。問い合わせが来たらどうフォローするかをマニュアル化して、再現性がある状態にしておかないと難しいですね。

聞き手:代理店に「作業だけ」を丸投げしている会社は、今後どうなりますか?

近藤氏:ますますブラックボックス化していくと思います。例えばGoogle広告の「P-MAX」。画像・テキスト・動画を入れると、GoogleがYouTubeやGmailなど自社のネットワークを駆使して自動で配信してくれる。便利なんですが、運用側から見ると、どのクリエイティブが効いているのかが見えにくい。

※P-MAX(パフォーマンス最大化キャンペーン)は、Googleの各広告枠に横断配信される自動化型のキャンペーンです。(参考:Google広告ヘルプ|P-MAXキャンペーンについて

聞き手:便利さと引き換えに、中身が見えなくなる。

近藤氏:リテラシーがないまま丸投げして、代理店もそういう便利なツールを使うと、事業主はますます中身がわからなくなる。見えないと対策も打てない。自分から『わからない状態』を作り出してしまっているんじゃないか、と感じることがあります。

聞き手:そもそも論として、Webだけで完結する前提が危うい、と?

近藤氏:そうなんです。あえて強く言いますが『そもそも御社のビジネス、Webだけで完結していないですよね?』 と。たとえば、展示会で出会ったお客さんをMeta広告で追いかけ、Webで認知してもらって、最後は対面のアナログ営業でしっかり受注につなげる。中小企業のマーケティング(営業活動)って、だいたいそういう全体の動線でできている。「展示会での熱量」や「社長を訪問したときの表情」、「地域のクチコミ」みたいなアナログの情報を動線に組み込むのは、AIには絶対にできません。ここを設計して、組織を動かすのが人の仕事です。

これからの最大の武器は「内製化」──社内に残すべき知見

近藤氏が語る、社内に残すべき知見

聞き手:そこで「内製化(インハウス化)」が出てくるんですね。

近藤氏:AI時代って、むしろ内製化が目指しやすくなったんです。判断軸さえ自分たちで決められれば、あとはAIにお任せできる部分が増えたので。事業や顧客を一番理解しているのは、外注先ではなく自社ですから。

聞き手:完全な内製化が難しい中小企業でも、最低限これだけは社内に残すべき、というものは?

近藤氏:ビジョン・理念・戦略があったうえでの「目的」と「目標」を、自社で決めること。要するに判断軸です。あと、よく「予算はいくら必要ですか」と相談されるんですが、これも本来は自社で決められた方がいい。

聞き手:予算は、どう決めればいいんでしょう?

近藤氏:僕は二通りの方法を伝えてます。一つは『目標数から逆算する』方法。目標のクリック数やターゲットを聞いて算出する。もう一つは『ターゲットのボリュームから考える』方法。エリアと年代から対象の人数を出して、それなら媒体はこれ、予算はこれくらい、と決める。この質問、即答できる人は少ないと思っていて、これは僕が中小企業相手に場数を踏んでいるからわかる部分でもあります。

聞き手:目的や方針は人間が決めて、実行はAIに、と。

近藤氏:はい。目的達成のためにAIを使うのは大いにいい。でもベースになる自社の方針だけは、人間がちゃんと決めておく。そのうえで専門家に聞くなり、自分たちで勉強するなり、AIに聞くなりすればいい。AIの提案を鵜呑みにせず、「これはやるべきか否か」を合理的に判断できるリテラシーを、組織として持っておくことが大事です。

まとめ:2027年、不安を感じている企業へ

聞き手:最後に、AI時代の広告運用に不安を感じている企業へ、メッセージを。

近藤:2027年、Web広告から「作業としての人の手」は、確かに消えていくと思います。でも、「事業の変革に真摯に向き合って、挑戦をコントロールする人」の価値は、ますます高まります。だから「AIに仕事を奪われる」のではなく、「AIを使いこなせる、事業を理解した人」だけが残る、という話なんです。

聞き手:不安への処方箋があるとすれば、何でしょうか?

近藤:「自動化が進んでいるはずなのに、なぜか成果が出ない」という方は、テクニックの前に、まず『自社の事業の強み』と『広告の設計』が噛み合っているかを見直してみてほしいです。だいたい、そこがズレています。


当社では、単なる広告運用の代行にとどまらず、企業が自社でマーケティングをコントロールし、未来へ向かって挑戦していくための伴走支援を行っています。
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